2017年5月7日日曜日

民事信託と遺言の内容が異なったら!?

司法書士の谷口毅です。ゴールデンウィークも、そろそろ終わりですね。私は、岡山・香川と、ゆっくり旅行をしてきました。

さて、民事信託・家族信託について、今日も楽しく学びましょう。

「民事信託と遺言の内容が異なったら、どうなるんですか!?」と、よく質問されます。民事信託には、遺言と類似する機能がありますから、この疑問は当然ですね。ただ、落ち着いて考えれば、答えは見えるはずです。

なお、前提として、民事信託と遺言の違いについては、過去の記事をご覧ください。

民事信託と遺言の使い分け

例えば、「甲不動産をAに遺贈する」との遺言を作成した後に、甲不動産について民事信託の契約を締結した場合を考えてみましょう。

信託契約を締結すると、委託者から受託者に、甲不動産の財産の所有権が移転してしまいます。そうすると、甲不動産は委託者の所有する財産ではなくなってしまいます。甲不動産は遺言者の遺産ではない、ということになってしまいますから、遺言が有効になる余地がありません。民事信託の契約の前に作成した遺言は、撤回されたものと考えられますね。

民法1023条2項は、遺言が、遺言後の生前処分と抵触する場合には、撤回されたものとみなす、と規定しています。例えば、遺言後に遺言者が甲不動産を他人に贈与したり、売却したりしたら、遺言は撤回したものとみなされますが、これは信託であっても同じである、と考えられますね。

では逆に、甲不動産を信託した後に遺言を作成した場合はどうか?
先ほど書いたとおり、甲不動産を信託すると、その財産の所有権は受託者に移ってしまいます。すると、委託者は甲不動産を所有していないわけですから、甲不動産について遺言を作成すること自体に意味がない、ということになります。

落ち着いて考えると、民法の原則どおりで判断すれば良さそうですね。
もっともっと深く考えていくと、判例がない部分にまで踏み込んでいくのですが、続きは、また、別の機会にでも。

今後も、民事信託・家族信託を楽しく学びましょう。

当事務所では、民事信託・家族信託について、一般の方はもちろん、専門家からの質問や共同受任、講演依頼なども受け付けております。
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