2017年4月23日日曜日

民事信託と不動産登記2

司法書士の谷口毅です。

本日は、リーガルサポートの鳥取支部の役員会でしたので、5月の総会に備えて資料の作成をしたり、成年後見制度利用促進法への対応などを話し合っていました。

さて、前回に引き続いて、不動産登記の、信託目録の意義について考えてみます。



信託目録の意義はいくつかあるのですが、そのうちの一つに、後続登記をする際の基準となる、ということがあります。

例えば、信託目録に、「受託者は信託財産に属する不動産を売却することはできない」と書いてあったとします。この場合、次に売買による所有権移転登記を申請しても、登記官は登記を進めてくれません。信託目録と反する登記を却下することで、受託者の執務を適正化し、受益者の保護を図るという機能があるのですね。

例えば、受託者を解任したことによる所有権移転登記を申請する場合を考えます。ここで、信託目録に、受託者の解任についての規定が書かれていない場合は、どうなるでしょうか。信託法のデフォルト・ルール(特約がない場合の基本的な法律の定め)では、受託者の解任については、委託者と受益者の合意によって決定することになります(信託法58条)。

信託目録に受託者の解任についての規定がないということは、登記官は、信託法のデフォルト・ルールに従って、後続登記についての判断を行います。そうすると、受託者の解任を次に申請しようとする場合、その登記原因証明情報には、「委託者と受益者の合意によって受託者を解任した」との旨を記載することになります。

一方、信託目録に、「受益者が受託者に意思表示をすることで、いつでも受託者を解任できる」と書いてある場合を想定します。この記録は、信託法58条のデフォルト・ルールを変更する特約を公示しているのだ、と考えることができますね。

そうすると、受託者の解任による所有権移転登記を申請する際には、登記原因証明情報に、「信託行為の定めに従い、受益者が受託者に意思表示をすることで、受託者を解任した」と記載することになります。

このように、信託目録に何を記録するのかによって、後続の登記の可否や、添付情報などに大きな影響を与えてしまうことになります。そうすると、次に登記をする人が判断しやすいように、信託目録を作ってあげないといけないですね。登記を申請する司法書士の責任は重大です。

それでは、今日はこの辺で。
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