受益権とは、信託の利益を受ける権利だ、と一般的には説明されます。
では、具体的にどのような権利なのか、見てみましょう。
法律の規定を見てみると、信託法2条7項に、受益権の定義が書かれています。
この法律において「受益権」とは、信託行為に基づいて受託者が受益者に対し負う債務であって信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)及びこれを確保するためにこの法律の規定に基づいて受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利をいう。
ちょっと分かりにくいので、この条文を分解してみます。
「「受益権」とは、(略)受託者が受益者に対し負う債務であって」
とあることから、受益者が債権者であり、受託者が債務者なのである、ということが分かります。
「信託財産に属する財産の引渡しその他の信託財産に係る給付をすべきものに係る債権(以下「受益債権」という。)」
とあることから、要するに、「財産を給付してくれ!」と請求する権利であることが分かります。これを、受益債権と呼ぶのですね。
「これを確保するために(略)受託者その他の者に対し一定の行為を求めることができる権利」とあります。
つまり、受託者に対して、帳簿を見せることなどの一定の行為を求める権利であると分かります。
まとめると、以下のことが分かります。
①受益権とは、受益者を債権者、受託者を債務者とする債権である。
②受益権については、「財産を給付せよ」と受託者に求める権利と、「このような行為をせよ」と受託者などに求める権利に分解することができる。
③「財産を給付せよ」という権利は、「受益債権」と呼ばれる。
ということですね。
「受益権」と「受益債権」。似ているようで、ちょっと違う用語です。
「受益権」のうち、経済的利益を求める権利だけを抽出したものが、「受益債権」なのですね。「受益権」のほうが、「受益債権」よりも範囲が広い言葉です。
信託に慣れた専門家でも、混同しがちなので気をつけましょう。
では、今日はこの辺で。
次回、受益権について、もうちょっと掘り下げてみます。
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