2017年4月26日水曜日

信託監督人と受益者代理人

司法書士の谷口毅です。

今日は、信託監督人と受益者代理人について。信託の当事者といえば、委託者・受託者・受益者が基本ですが、そのほかによく使われるのが、信託監督人と受益者代理人ですよね。
この両者はどう違うのか、という点を整理してみましょう。




色々な切り口から違いを述べることができるのですが、今日は、その権限の違いという観点から。両者の権限の違いを知るためには、まず、受益者の権利とはなんだったのか、考えてみる必要があります。
受益者の権利については、下記の2つの記事に書いたとおりですね。

民事信託における受益権とは何か?

信託契約書の作成と受益権

要するに、受益者の権利とは
①財産の給付を求める権利(受益債権、任意法規)
②信託の意思決定に関する権利(任意法規)
③受託者の監督、受益者の保護に関する権利(92条、強行法規)
の3つに大別できるわけであります。

信託監督人の権利も、受益者代理人の権利も、もともと受益者が有している、上記の3つの権利をもとに考えてみたほうがいいのです。

信託法132条を見ると、信託監督人の権利とは、「信託法92条各号に定める権利に関する一切の裁判上及び裁判外の権利」と書いてあります。そうすると、信託監督人の権利は、受益者の権利の上記①~③のうち、③だけを抜き出したもの。受託者の監督や受益者の保護に関する、強行法規としての部分だけを抜き出したものが、信託監督人なのですね。

それに対して、受益者代理人の権限を定めているのは、信託法139条。「当該受益者の権利に関する一切の裁判上及び裁判外の行為をする権限」とあります。そうすると、受益者代理人の権限は、①、②、③のすべてとなります。

何かと分かりにくい信託監督人と受益者代理人の違いですが、受益者の権利のうちのどの部分を行使できるのか?という点が区別のポイントなのですね。

別の切り口からも違いはあるのですが、もっとも重要なのはここです。

ということで、今日はこの辺で。
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