2020年4月3日金曜日

受益権の放棄 その4

おはようございます。


大阪の司法書士、岡根が担当させて頂きます。

本日は、受益権の放棄のお話の続きです。

前回の記事はこちらです。


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さて、受益者が、受託者に対して、受益権を放棄する旨の意思表示をするとどうなるでしょうか。

この場合、受益者は、当初から受益権を有していなかったものとみなされます(信託法992項)。

信託法第2条6項において、「受益者とは受益権を有する者をいう」と定義されていますので、受益権の放棄により当初から受益権を有していなかったものとみなされる結果、当初から受益者ではなかったものとして扱われることになります。


ここで、前々回の事例に戻りますね。

次のような事例でした。

家族構成は、父、母、長女、長男、二男、三男です。

お父さんは、長女を受託者として、自宅不動産と金銭につき信託を設定しました。

お父さんは、信託設定当初の受益者は自分自身とし、自身死亡後の受益者をお母さん、お母さん死亡後の受益者を三男、三男死亡後の受益者を二男と定めました。

お父さんは、自営業を営む三男の将来のことを心配して、このような信託を設定しました。


この場合、三男が受益権を放棄すると、後の受益者である二男の受益権はいつ発生するのでしょう?

次の二つの解釈が出てきそうです。

1)お母さんが死亡した時に、初めから二男が受益権を取得したことになる。

2)あくまでも三男が死亡した時に、二男が受益権を取得することになる。

委託者の通常の意思としては(1)だとは思いますが、もし(2)の解釈によった場合、三男が死亡するまでは受益者が存在しない信託となってしまい、課税上、大きな不利益を被る可能性も否定できません。


最終的には、信託契約の解釈によることになると思われますが、契約書を作成するときは、このように不明確な条項とならないように注意しないといけませんね。


それでは、どのような条項にすればよいでしょうか?

つづきます。


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