おはようございます。
本日の担当は、鳥取の司法書士の谷口毅です。
信託事務費用の続き、その4です。
前回の記事はこちらです。
前回、前払という言葉の意味を解説しました。
しかし、実務上、前払を行うことは稀であると考えられます。
これは、委任と信託を比べてみれば、よく分かると思います。
委任の場合、必要な費用をあらかじめ委任者から預かっておく、ということがよくあると思います。
私たち司法書士も、登記をする際には、法務局に何十万円も納めることがありますので、事前に依頼者からお金を預かりますね。
うっかり、自分が立替払いをしてしまうと、後で依頼者が逃げてしまった場合に、自腹を切らないといけないので、前払を受けることは大変に重要です。
しかし、信託の場合は、信託財産も、固有財産も、どちらも受託者の財産です。
委任の場合のように、依頼者が逃げてしまうことは想定できません。
わざわざ前払を受けて、事前に信託財産から固有財産に移す必要はないのです。
必要な都度、信託財産から払えば、それでよいわけですから。
また、前払には危険な側面もあります。
例えば、受託者が、今後5年間に必要な固定資産税相当額の前払を受けて、事前に信託財産から固有財産に移してしまったとします。
こうすると、合理性もないのに、信託財産の目減りを招くことになりますね。
つまり、不必要に前払を受けること自体が、善管注意義務違反になってしまうのです。
だからこそ、信託の受託者は、前払を受けることは稀なのです。
続きます。
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