2020年2月11日火曜日

競合行為の制限 その4

おはようございます。

本日は、大阪の司法書士の岡根昇が担当します。


受託者の競合行為の制限の最終回です。

前回までの記事は、こちらをご覧ください。

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これまで、受託者の競合行為の制限について見てきました。

競合行為の制限は、主に信託銀行が受託者となる商事信託の分野で議論されるところです。

信託銀行は、受託者としてだけではなく、銀行としても様々な事業を行っていますので、常に競合行為の問題を意識しています。

そのため、競合行為の許容の定めを設けるだけではなく、一般的忠実義務にも反しないように、信託業務と銀行業務のフロアを物理的に分けるなどの情報遮断の措置「壁(ウォール)の設定」にも気を配っています。

民事信託では、あまり意識することはありませんが、受託者が不動産業を営む親族である場合のように、競合行為が問題となることもありそうです。

商事信託の考え方をそのまま持ち込むと、「ウォールの設定もなしに、競合行為を行うことは忠実義務違反のおそれが高い。」ということになるでしょう。

しかし、民事信託においては、信託銀行のようなウォールの設定は現実的には不可能ですよね。

ウォールの設定をせずに信託を設定することを前提として、当事者全員が合意しているはずです。

民事信託においては、少なくとも、競合行為の許容の定めがあれば、特に不当な意思をもって競合行為をしない限り、一般的忠実義務にも反しないと考えることはできないでしょうか。

この辺りは、よく分かりませんので、実務家としては、トラブルにならないように備えておくことが必要です。

民事信託において、競合行為が問題となりそうなケースでは、まずは、許容の定めを設けておく。

そして、競合行為を行うときは、許容の定めがあったとしても、忠実義務違反を問われないように、その都度、受益者に説明をして承諾を取り付けておくのがよいと思われます。

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