2020年2月4日火曜日

競合行為の制限 その3


おはようございます。

本日は、大阪の司法書士の岡根昇が担当します。


受託者の競合行為の制限のお話のつづきです。

前回までの記事は、こちらをご覧ください。
競合行為の制限 その1


本日は、受託者の競合行為の制限の例外規定について考えてみましょう。

信託法第32条2項には、受託者の競合行為の制限についての例外規定があります。

受託者は、以下の場合は、競合行為をすることができるとされています。

(1)信託行為に許容の定めがあるとき

(2)重要な事実を開示して受益者の承諾を得たとき


例えば、信託契約書に「受託者は、自己又は利害関係人の計算において、不動産の賃貸、売買を行うことができる。」等の定めがあれば、競合行為は認められることになります。


ここで、前回の事例に戻ります。

長男は、利回りの良い物件なので、受託者としては購入せず、個人で購入しようとしています。

信託契約において、競合行為の許容の定めがあれば、長男は、個人としてこの不動産を購入することが許されます。

しかし、たとえ競合行為の許容の定めがあったとしても受益者の利益を犠牲にして、自己の利益を図るために競合行為をしてしまうと、それは一般的忠実義務や善管注意義務に反することになる、と考えられています。

このように、信託行為の許容の定めがあれば、どのような競合行為も許されるという訳ではなく、その場合でも、受託者は受益者のため忠実に行動しなければならないので、注意が必要です。

つづきます。
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