2020年1月24日金曜日

競合行為の制限 その2

おはようございます。

本日は、大阪の司法書士の岡根昇が担当します。

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受託者の競合行為の制限のお話のつづきです。

前回の記事は、こちらをご覧ください。
競合行為の制限 その1


不動産業を営む長男は、利回りの良い物件なので、受託者としてではなく、個人で購入したいと思っています。

長男は、不動産業を生業としているのですから、このように思うのは当然ですね。

もし、長男が個人で購入することは、競合行為だから認められない、となるとどうでしょう?

誰も受託者には就任しなくなってしまいます。

信託法は、この点にも配慮して、競合行為の制限に関する規定を設けています。


条文を確認しておきましょう。

【信託法第32条1項】
受託者は、受託者として有する権限に基づいて信託事務の処理としてすることができる行為であってこれをしないことが受益者の利益に反するものについては、これを固有財産又は受託者の利害関係人の計算でしてはならない。

信託法第32条1項は、受託者が信託事務として行わず、個人的な取引として行う場合に、それが受益者の利益に反する場合だけを規制しています。

つまり、競合行為が一律に制限されるのではなく、実質的に、受益者の利益に反することになるかどうかが、判断基準になるのですね。



事例に戻ります。

不動産業を営む長男が、利回りの良い物件を受託者としてではなく、個人で購入すると、受益者であるお父さんの利益に反することになるのでしょうか?

この判断は、なかなか難しそうですね。

今は、信託財産に余裕がないので、受託者としてではなく、個人として購入しておこう、ということもあると思います。

この場合は、受益者の利益に反することにならないでしょう。



他方で、信託の目的、信託契約の条項からすると、たとえ、信託財産に余裕がなくても、受託者として購入すべきだ、ということもありえますね。

この場合は、受益者の利益に反することになりそうです。

どのような場合であれば、受益者の利益に反することになるかは、一概には言えませんね。

でも、受託者である長男にとってみれば、どのような競合行為が制限されるのか、はっきりしないと不安です。



実務上、何らかの対策をとっておくほうがよさそうです。

次回は、競合行為の制限の例外規定を見ていきましょう。

つづきます。

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