2020年7月15日水曜日

受益者代理人に代理される受益者の登記 その4

おはようございます。

本日は、東京の司法書士の池田弘子が担当させていただきます。

「受益者代理人に代理される受益者の登記」に関するお話の続き(その4)です。

前回までの記事はこちらです。
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受益者代理人に代理される受益者の登記(その1)



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前回、受益者代理人と受益者代理人に代理される受益者を併記することとした場合、信託目録に【2】のように記録される可能性があるということをお話ししました。

【2】
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受益者     丁目
 
       山田太郎
受益者代理人  ▲丁目
 
       山田花子
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そして、【2】のように登記されてしまうと、受益者が山田太郎だけなのか他にもいるのか、登記から判別がつかず、公示としては不十分なものとなってしまうというお話もしました。

ならば、併記なんかせず、受益者代理人だけを登記しよう!
と考える方もあるかもしれませんが、私は、民事信託においては、受益者は出来るだけ登記する方向で検討すべきだと考えています。

受益者代理人を置く目的は、大きく(1)信託の運営をスムーズに行うための場合と、(2)受益者の保護のための場合とに分かれます。
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(1)の例として・・・
 
受益者が多数であったり、常に変動することが想定されるような場合
 
(2)の例として・・・
 
高齢者や幼い孫を受益者として信託を設定しようとする場合
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~(1)の場合~
例えば、投資の対象として受益権を取得した受益者が多数いるような場合は、誰が受益者であるかということは、当該信託においてあまり問題になることはないと考えます。


一旦、受益者を登記してしまうと、受益者が変更するたびに変更登記の申請が必要となります(不動産登記法第103条第1項)。

そうすると、受益者が多数の場合は、変更に次ぐ変更で、かえって一覧性を欠く登記を作り出してしまう可能性があります。

ですので、(1)の場合は、受益者代理人のみを登記して、受益者の登記を省略するという選択をするべき場合が多いのではないかと考えます。


~(2)の場合~
私達が民事信託支援業務で携わることになるのは、そのほとんどが(2)の場合です。

民事信託の受益者の場合は、誰が受益者であるのかが重要です。
信託契約に以下のような規定があった場合、誰が受益者かによって、受託者の権限に影響がでたり、信託そのものが終了することになります。
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・受託者は、受益者が信託不動産に居住しなくなったときは、信託不動産を売却することができる。
 
・本信託は、受益者が死亡した時に終了する。
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確かに、受益者は信託の登記における直接の申請当事者ではありませんが、特に民事信託においては、誰が受益者であるかを登記記録から知ることができる意味は大きいのではないかと考えています。

もちろん、受益者と受益者代理人を併記して登記すべきか否かについて、事案ごとに検討することは必要です。

しかし、信託において重要な地位を占める受益者について、登記を省略することが認められているからという理由だけで、安易に登記しないと判断することは、避けるべきだと考えています。

私は、(事例1)のようなケースでは、以下のようにして「信託目録に記録すべき情報」を作成しています。

 1.【1】のように、受益者代理人の肩書に代理する受益者の名を付して、受益者とその受益者代理人を併記する。
【1】
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
受益者  丁目
     山田太郎
受益者山田太郎の受益者代理人
     丁目
     山田花子
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
(注)【1】の形式は、あくまで私独自の記載方法を紹介したものです。
【1】の形式では受理されないこともありますので、実際に申請をされる場合には、事案ごとに管轄法務局に確認して申請してくださいね。


2.その他の信託の条項(不動産登記法97条1項11号)にも、当初の受益者である山田太郎の受益者代理人として山田花子が指定されている旨を記載しておく。

仮に【1】の形式で登記されず、【2】の形式で登記されたとしても、上記2のとおり、その他の信託条項に記載しておけば、山田花子が受益者山田太郎の受益者代理人であることを、登記記録上、明らかにすることができますよね。


長くなってきたので、今日はこの辺で。

次回は、当初受益者A第二次受益者Bの場合で、CがAとBの受益者代理人に指定されているケースについて、検討してみたいと思います。



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