2020年7月8日水曜日

信託財産に属する金銭で不動産を購入した時の登記 信託の登記 その2

おはようございます。

本日は、大阪の司法書士岡根が担当します。

受託者が信託財産に属する金銭で不動産を購入した場合の登記のお話の続きです。


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前回の記事はこちらです。



不動産登記法第98条1項は、「信託の登記の申請は、当該信託に係る権利の保存、設定、移転又は変更の登記の申請と同時にしなければならない」としています。

つまり、受託者が信託財産に属する金銭で不動産を購入した場合、所有権移転の登記と信託財産処分による信託の登記は、同時に申請しなければならないのです。

この条文からすると、後から信託の登記のみを申請することはできない、ということになりそうですが、これに関しては、次の登記先例があります。

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昭和41年10月31日付民事第2970号民事局電報回答
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売買を原因として乙が甲から所有権取得の登記をしている土地について、丙を委託者とし、乙を受託者とする信託財産の処分により得た財産であるとして、後日乙から信託登記の申請があったときは、受理してさしつかえない。


この当時の不動産登記法においても、所有権移転の登記と信託の登記は同時に申請しなければならないとされていました。

つまり、現行の不動産登記法第98条1項と同趣の規定がある中で出された先例ですので、古いものとはいえ、現在も適用されるものだと思われます。

【旧不動産登記法第第110条の2】
1. 信託ノ登記ノ申請ハ信託ニ因ル不動産ノ所有権ノ移転ノ登記ノ申請ト同一ノ書面ヲ以テ之ヲ為スコトヲ要ス
2. 前項ノ規定ハ信託法第十四条ノ規定ニ依リテ信託財産ニ属スル不動産ノ取得ノ登記ヲ申請スル場合又ハ同法第二十七条ノ規定ニ基ク信託財産ノ復旧ノ場合ニ之ヲ準用ス


このように、信託の登記申請を忘れたとしても後から申請することができるのであれば、大した問題ではない、という印象をもってしまうかも知れません。

しかし、受託者自身が、信託財産に属する金銭で購入した不動産は信託財産に属するものになることを認識できておらず、ずっと信託の公示がなされないままとなってしまうことも考えられます。

このようなことを避けるためにも、民事信託の組成に関与した者としては、信託期間中においても、適切なアドバイスができるような体制を整えておきたいものですね。

信託の学校では、今回、ご紹介したような登記先例等、実務に役立つ情報をご用意しています。

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