2020年7月28日火曜日

受託者の権限の制限 その1

おはようございます。



大阪の司法書士岡根が担当します。

本日は、ある信託契約書の条項例について考えてみたいと思います。

「受託者は、受益者代理人の同意を得て、信託不動産を売却することができる。」
という条項例です。


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お父さんが、自身を受益者、長男を受託者として不動産を信託しました。

そして、二男を受益者代理人と定めました。

信託契約書には、「受託者は、受益者代理人の同意を得て、信託不動産を売却することができる。」という定めがあります。

この場合、受託者である長男が信託不動産を売却するには、受益者代理人である二男の同意が必要となりますね。

不動産登記手続においては、受益者代理人の印鑑証明付の同意書の添付を要することになると思われます(登記研究 質疑応答 第508号)。


ここで、この条項の法的性質について考えておきましょう。

受託者には、信託財産に属する財産の管理、処分だけではなく、信託の目的の達成のために必要な行為をする権限があります(信託法26条)。

このように、受託者は、原則として、信託財産に属する財産について、広範囲にわたる管理処分権限をもっています。

しかし、受託者の権限に一定の制約を課す必要がある場合も踏まえ、信託法26条ただし書は、信託行為で、受託者の権限を制限することができるとしています。

 
つまり、受託者が信託不動産を売却するときには受益者代理人の同意を要するという定めは、信託法26条ただし書に基づく、受託者の権限を制限するものだということになります。

このような条項を設けることによって、受託者は、受益者代理人に必ず相談をしないといけなくなります。

受託者である長男が、いい加減な諸条件で売却してしまうといったことを防ぐことができ、お父さんにとっては心丈夫でしょう。

ところで、この条項は「受益者代理人」の同意と定めていますが、果たして、これでよいでしょうか?


次回、この点について考えてみたいと思います。信託の学校の開校日まで 1ヶ月を切りました!
現在、事務作業に奮闘中です。



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