2019年8月6日火曜日

受益者以外の第三者を債務者とする(根)抵当権の設定 その3

本日の記事は、大阪の司法書士の岡根昇が担当いたします。
今まで、2回ほど、担保権の設定が利益相反行為にあたる場合について書かせていただいているので、その続きを書きますね。

過去2回の記事はこちらです。
受益者以外の第三者を債務者とする(根)抵当権の設定
受益者以外の第三者を債務者とする(根)抵当権の設定 その2

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さて、今までの復習です。
受託者個人の債務のために、受託者が信託財産に属する不動産に担保を設定することは、利益相反行為と呼ばれ、禁止されています。
しかし、信託契約書の中に、利益相反行為を許容する、という定めを置けば、利益相反行為をしても許される、ということになります。
このようなことが、信託法31条に書いてあるのでした。

しかし…気になりますね。
利益相反行為を許容すると契約書に書くといっても、どこまで許されるのでしょうか?
例えば、「10億円の価値がある信託不動産を、受託者自身が100万円で買ってもいい!」という定めをおいた場合は、どうでしょうか。
感覚的には、絶対にアウトですよね。
受益者の利益がないがしろにされている、という印象を持ってしまいます。
しかし、信託法31条だけを読んでいると、これも問題ないのでは?という気もします。

なので、ここから先は、信託法31条そのものよりも、学者や立法担当者の議論などを参考にしないといけません。
みな、利益相反行為を許容する場合に、受益者の利益をどうやったら守れるのか?ということに気を配って議論をしています。
また、受託者の行為は、信託の目的の達成のためにありますので、利益相反行為を行うことが、信託の目的の達成のために必要でなくてはなりません。

つまり、考慮すべき要素は2つ。
受益者の利益を守る
信託の目的の達成に必要である
ということになります。

では、このように、「受益者の利益を守る」「信託の目的の達成に必要である」利益相反行為とは、どのようなものでしょうか。
次のような例が典型的でしょう。

お父さんは、自身を受益者、長男を受託者として、自宅不動産を信託した。
長男は、お父さんの施設入所費用に充てるため、自宅不動産を売却しようとしている。
しかし、自宅は再建築不可の土地上にあるため、なかなか売れない。
長男は、この自宅不動産を適正な価格で買い取ってもよいと考えている。

このような場合に、長男が信託不動産を適正な価格で買い取ることは、まさに、信託の目的の達成のために必要で、かつ、受益者の利益は守られている、ということになります。


このように気を配ると、適正な信託の運用の手助けができそうですね。

続きます。

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