2019年7月19日金曜日

受益者以外の第三者を債務者とする(根)抵当権の設定

大阪の司法書士岡根昇です。
今回も司法書士谷口毅先生のブログとメルマガに投稿させて頂くことになりました。
ご迷惑とならないよう気を付けなければ…

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さて、本日は、受託者の利益相反行為について考えてみましょう。
相談事例を挙げて考えてみます。


お父さんからの相談です。
自分が認知症になった後でも、資産管理会社(長男が代表者)の債務を担保するために担保権を設定できるようにしておきたい。
そのために、長男を受託者として、不動産を信託しておきたい。


このような相談を受けた場合に、次のようなスキームをイメージするのではないでしょうか?
委託者兼受益者:お父さん
受託者:長男
信託の目的:不動産の管理処分を通じて、お父さんの生活の安定と福祉の確保をすること
受託者の権限:受託者は、信託財産に属する不動産につき、受益者、受託者又は第三者を債務者とする担保権を設定することができる。


イメージした後、きっと疑問が湧いてくるはずです。
信託は、受益者のための財産管理制度。。。
受益者であるお父さんの債務ではなく、第三者の債務のために信託財産を担保に供することは、果たして受益者のためになるのでしょうか?


そうなんです。
信託には、受託者は、もっぱら受益者の利益を図らなければならず、自分や第三者の利益を図ってはいけないという大原則があります。これを忠実義務といいます。
この忠実義務の具体的な現れの一つとして、信託法31条の利益相反行為の禁止規定があります。



条文を見てみますと、信託法31条1項4号では、受託者個人の債務を担保するために信託財産に担保権を設定するという行為を典型的な利益相反行為の例としてあげて、これを禁止しています。
そして、「第三者との間において信託財産のためにする行為であって受託者又はその利害関係人と受益者との利益が相反することとなるもの」一般を禁止しています。



つまり、第三者の債務のために信託財産を担保に供することは、この禁止規定に抵触することになります。



そして、さらに詳しく条文を見ますと、この例外規定があります。
信託法31条2項では、信託契約書に利益相反行為を許容する定めがあるとき、受託者が重要な事実を開示して受益者の承認を得たときなど、受託者の利益相反行為が許される事由が規定されています。

 

そうすると、最初にイメージしたスキームのように「受託者は、信託法31条の規定に関わらず、信託財産に属する不動産につき、第三者を債務者とする担保権を設定することができる。」と規定しておけば、利益相反行為の許容の定めがあるものとして、お父さんの希望(資産管理会社を債務者とする担保権の設定)を叶えることができそうに見えますが、果たしてどうでしょうか?



この点については、更に考えないといけないことがありますが、今日はこの辺りにして、次回以降で触れたいと思います。



本日の内容と関連する信託法の条文は、30条、31条です。受託者の利益相反行為の制限に関する一般的なお話でした。
興味がある方は、また一度読んでおいてくださいね。

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