2019年7月30日火曜日

受益者以外の第三者を債務者とする(根)抵当権の設定 その2

本日の担当は、大阪の司法書士の岡根昇です。
前回、私が書いた記事の続きを書きますね。

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さて、改めまして、前回の続きです。
前回の記事は、下記のページにありますので、目を通してください。
http://www.tsubasa-trust.net/2019/07/blog-post_19.html


本日は、登記の側面から、受益者以外の第三者を債務者とする担保権の設定について考えてみたいと思います。


さて、なんといっても、司法書士は登記の専門家。司法書士にとって、登記先例は重要ですね。
というわけで、受益者以外の第三者を債務者とする担保権の設定に関する登記先例は、あるのでしょうか?
探してみますと・・・、あるんです。



昭和40年12月9日付登発第418号山口法務局長照会
昭和41年5月16日付民事甲第1179号民事局長回答【要旨】
受託者が第三者の債務の担保として信託財産に抵当権を設定しその登記の申請があった場合、委託者及び受益者の承諾があるときでもその申請は受理すべきでない。



これは、第三者の債務の担保のためにする抵当権設定は、これによって受益者が受ける利益は何もないことを理由としているようです。


この先例の解説をよく読みますと、「受益者及び委託者の承諾があった場合は信託財産を第三者の債務の担保に供しうると解することは、立法論としてはともかく、現行法の解釈としては疑問があることから、本回答がなされたものと考える。」とあります。


つまり、この先例は、旧信託法の解釈によるものなんです。
旧信託法では、利益相反行為は、例外なく許容されませんでした。
なので、このような先例が出たのも納得できます。


でも、今は、新信託法をベースに考えないといけません。
新信託法では、31条2項で、信託契約書に利益相反行為を許容する定めがあるときや、受託者が重要な事実を開示して受益者の承認を得たときなどには、利益相反行為は許容されることになっています。



司法書士にとって、登記先例は重要ですが、古い先例の存在に惑わされてはダメです。



新信託法では、重要な事実を開示して受益者の承諾を得たことは、受託者の利益相反行為の例外と定められているのですから、この先例のようなケースの登記申請は、受理されるべきだと思います。


もちろん、登記官への事前相談は必須です!!
OKと明示した先例は、まだ発出されていないからです!!


さて、前回の事例に戻りますね。
信託契約書に「受託者は、信託法31条の規定に関わらず、信託財産に属する不動産につき、第三者を債務者とする担保権を設定することができる。」と規定しておけば、登記の局面においても問題なさそうです。


それでは、登記面の他に、どのようなことに配慮をする必要があるでしょうか。
続きます。

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