2017年10月28日土曜日

信託口口座と差押

司法書士の谷口毅です。
今日は土曜日ですね。午前はのんびり。午後からは、市民後見人養成講座でちょっとだけお話をしなきゃいけない、ということもあったり、相続財産管理人選任申立書を作るとか、登記の見積書を作るとか、そんなことをしようと思っています。




さて、今日も楽しく、民事信託・家族信託の勉強をしましょう。
今、空いた時間に信託フォーラムのvol.8なんかを読んでいます。
で、その中で、ふと疑問に思ってしまった記載がありまして…


「受託者名義の預金は信託財産であるから、金融機関は、受託者名義の預金等については、固有財産である預金等に対する差押え等の対象から除外して対応しなければならない。」という記載です。

う~ん?これ、本当か?という疑問がぬぐえません。
いや、信託には倒産隔離機能があるから、信託と関係なく受託者が債務を負っている場合に、信託財産である預金を差し押さえてはいけないんだ、ということは、とてもよく分かるんですよ。
でも、差押えから除外するかどうかっていうのは、金融機関の判断でできることなの?っていう疑問です。

受託者が負う債務には、3種類あります。
①信託財産責任負担債務
信託財産に属する財産にも、受託者の固有財産に属する財産にも、差押できます。
②信託財産限定責任負担債務
信託財産に属する財産には差押できますが、受託者の固有財産に属する財産には差押できません。
③信託と無関係の債務
受託者の固有財産に属する財産には差押できますが、信託財産に属する財産には差押できません。

差押があった時に、請求されている債権が上記①~③のうちのどれなのか、金融機関が判断できるんでしょうか?
さらに言えば、受託者が複数の信託の受託者になっている時に、そのうちのどの信託に関する信託財産責任負担債務に係る債権について請求されているのか、金融機関が判断できるのでしょうか?
委託者Aさん、受託者Bさんの信託口口座はロックするけれども、委託者Cさん、受託者Bさんの信託口口座はロックしない、みたいな柔軟な対応を金融機関に求めるのは、かなり過酷であると思います。

例えば、信託財産に属する不動産を、受託者が修繕した。そして、その修繕代金として、200万円かかった。この200万円は、信託事務の執行に必要な費用なので、信託財産責任負担債務です。上記の①ですね。ということは、債権者は、信託財産に属する財産にも、受託者の固有財産に属する財産にも差押えをすることもできます。

で、受託者が200万円を払わなかったから、修繕業者が怒って、受託者に訴訟を起こしました。結果、「200万円を支払え」という判決を得ました。

判決が出ても受託者が支払わなかったので、修繕業者はさらに怒って、裁判所に債権差押の申立をしました。すると、裁判所からの債権差押命令が金融機関に送達され、金融機関の担当者が口座をロックしてしまいます。

ここで、金融機関は何をもとに判断するかというと、裁判所から届いた「債権差押命令」だけです。この「債権差押命令」には、どのような判決が下されたのか詳細には書かれていませんし、信託財産責任負担債務だ、とか、固有財産だけで支払うべきだ、とか、具体的にどの信託なのか特定するとか、そういうことは書けないと思うのですよね…

そうすると、債権差押命令を受け取った金融機関としては、判断材料がありませんので、とりあえず受託者名義の預金は、信託口口座であろうが受託者の個人口座であろうが関係なく預金をロックしてしまう以外には対応方法がないような気がしています。

しかも、金融機関がぐずぐずしていると、受託者が口座をからっぽにするかもしれません。急いで預金をロックしないといけないというのが金融機関の事情でしょう。私が金融機関の担当者であれば、時間との戦いですから、迷うことなく、信託口口座であろうがなかろうが、全口座をロックします。

で、もしも誤った差押さえがなされているのであれば、事後的に、受託者又は受益者が第三者異議の訴えをするしかない、と考えています。

なお、この場合、受託者が第三者異議の訴えを提起することは、信託事務の執行の一環であり、善管注意義務を負う以上は当然にやるべき職務である、と考えられます。

まぁ、これは私個人の見解に過ぎないので、いや、金融機関のサイドでも簡単に判断できるんですよ、とかいう方法があれば教えていただきたいところです。

当事務所では、一般の方からの相談のみならず、専門職からの有料相談、共同受任、契約書チェック、研修会の講師などもお受けしております。

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