2017年10月18日水曜日

信託の目的3 信託の存続可能性の判断

司法書士の谷口毅です。
本日は、午前中に決済2件。
午後から破産の書類に目を通したり、訴訟の準備書面を作ったり、被補助人さんの自宅の改修の打ち合わせをしたり、という感じでした。
ついでに、夜はウォーキングがてら、期日前投票を行ってきたところです。
さて、今日も楽しく民事信託・家族信託の勉強をしましょう。




ここのところ、信託の目的について書いていますけれども、信託の目的の機能として、「信託の存続可能性の有無」を判断する一つの基準になる、ということがあります。
具体的に言えば、信託法163条1号ですね。
 「信託の目的を達成したとき、又は信託の目的を達成することができなくなったとき」に、信託が終了すると定められています。
 具体的に、どのような場合が、この信託の終了事由にあたるのでしょうか。

 例えば、特定の受益者が進学するための費用として信託を設定していた場合に、その受益者が大学を卒業した場合には、信託の目的の達成といえると思います。

 また、会社を経営している方が、「自分の保有する株式を後継者に円滑に承継するため」という目的で、自社の株式を信託したとしましょう。
 しかしながら、会社は解散してしまいました。
 この場合、株主である受託者は残余財産の分配を受けます。今まで株式信託だったのに、残余財産の分配を受けることで、金銭信託に変わってしまうのですね。
 そうすると、「株式を後継者に円滑に承継する」という信託の目的は、達成が不可能になったといえるでしょう。この場合、信託は終了し、帰属権利者に信託財産である金銭を給付することになります。

 さらに、「受益者であるAさんが、生涯ずっとこの家で暮らすために」という目的で、自宅を信託したとします。しかし、残念ながら、Aさんの有する受益権が、債権者によって差押さえられてしまいました。
 この場合、私の考えでありますが、受益権が差押さえられてしまった以上、Aさんがその家でずっと暮らすことは不可能になったというべきであり、目的の達成不能で終了することになると思います。
 
 ただ、具体的な事案において、どのような場合に信託の目的の達成や不達成と言えるのかは、なかなか判断が難しいケースが多いのではないかとも思われます。

 民事信託においては、営利を目的とする信託と比べて、属人的な目的が多いものと思われます。そうすると、受益者が誰でも良いというわけではなく、「Aさんが受益者である」という個性にこそ、信託の目的が込められている場合があると考えられます。
 例えば、受益者連続型信託において、途中で受益権が譲渡されてしまったり、差押さえがなされてしまった場合には、受益者連続のスキームが途中で壊れてしまうことになりますね。このような場合には、ケースバイケースですが、信託の目的の不達成と考えられることも多いと考えられます。

 それでは今日は、この辺で。
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