2017年8月3日木曜日

受益者複数と受益権共有

司法書士の谷口毅です。
29ロードウォーク、無事に完歩して、再び平和な日常に戻っています。
お盆前のシーズンは結構のんびりしてるのですが、うちだけかなぁ…
うちだけのんびりだったら、やだなぁ…などと思いつつ。

さて、今日は、僕も最近になるまで気づかなかった話。
「受益者複数」と「受益権共有」は、別の概念ですよ!という話です。


例えば、投資信託をイメージしてみてください。
みなさんが投資信託を買うと、「受益権の保有口数 5000口」などと書かれた運用報告をもらうと思います。
投資信託は、受益権が小口の口数に分かれ、多くの投資家が保有しているのですね。
これが「受益者複数」であります。

一方、5000口の受益権を保有している投資家が死亡したら、どうなるのでしょうか。
5000口の受益権の一口一口が、法定相続人全員の共有状態となりますね。
これが、「受益権共有」です。

「受益者複数」とは、複数の受益権が存在し、それぞれが別個の受益者に帰属すること。
「受益権共有」とは、1つの受益権について、複数の受益者に帰属すること。
似て非なる概念なんです。

例えば、以前の記事「受益者が複数の場合の意思決定」においては、受益者が複数の場合は、特段の定めがない限り、全員の一致で意思決定をするものだと書きました。


しかし、受益権共有の場合は、民法249条以下の、共有に関する規定が適用されるのですね。すると、保存行為であれば、各共有者が単独ででき、管理行為であれば持分の過半数で決定し、変更であれば、全員の同意で行うことができると考えられます。

そして、例えば、1個の信託に対して3個の異なる受益権があって、1つ目については受益者A、2つ目については受益者B、3つ目については受益者CDEが共有、となっているとします。
この場合、信託全体の意思決定の方法としては、「A」「B」「CDE」の3人の受益者なのだ、と考えます。
つまり、CDEが共有している受益権については、受益権共有なので、民法の規定に従って意思決定を行う。
その上で、CDEの決定を1人分の意思決定と考え、受益者Aも1人分、受益者Bも1人分、として、合計3人の意思決定で物事を決めることになります。
最後の決定については、「複数受益者」として考えるのですね。

理論的にはこうであっても、実際の適用場面を考えると、難しいですね…
この点の議論が、実務家の間ではほとんどなされていないと思いますし…
気づいている人が少数派なのかな?

具体的に受託者を解任したい場面や信託の終了の決定をしたい場面、受託者に金銭の給付を請求したい場面などで、どのように意思決定を行うのか、まだ、私の中では十分に考えがまとまっていません。
また、受益者複数と受益権共有を明確に区別するような契約書の作成が求められると考えられますが、これも、私の中では十分に考えがまとまっていません。

読んでる皆さん、誰か考えてくださ~い!
ってか、実務家のみなさん、誰かこの論点で議論してください…
僕の脳みそでは限界が…

ってことで、今日はこの辺で。

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