2017年8月8日火曜日

信託の登記と受益者の保護

司法書士の谷口毅です。
明日は、実践成年後見の70号の発刊予定のようですね。
私も、ささやかな事例発表の記事を寄稿していまして、本日、一足はやく事務所に完成品が届きました。
色々と目を引く記事はあったのですが、例えば、「被相続人の身の回りをの世話をしてきた近隣住民及び被相続人の成年後見人で報酬を得ていた親族について特別縁故者と認め、財産の分与を認めた事例」なんかは、タイトルだけで勉強になります(中身を読んでいませんけど)。



さて、今日は信託の登記と受益者の保護について考えてみます。
信託の登記には、色々な意味があります。信託の登記の目的のうちの一つに、受益者の保護がありますね。

信託には倒産隔離機能があります。従って、受託者が信託とは無関係に債務を負担している場合、その債権者は、信託財産に対して差押をするわけにはいきません。
債権者が、誤って信託財産に差押をかけてきた場合、受託者又は受益者は、第三者異議の訴えを提起することができます。
ここで重要なのは、不動産の差押に対して第三者異議の訴えを提起するためには、その不動産が信託財産に属するのだ、ということについて対抗要件を具備しておかなければならない、ということです。
そのための対抗要件が、信託の登記なのですね(信託法14条)。
信託の登記をしなければ、誤った差押に対して異議を述べることができず、受益者の権利が大きく損なわれることになります。

また、受託者が、本当は売却してはいけないにも関わらず、信託財産を売却してしまった場合、受益者はどのようにすればよいのでしょうか?
この場合、受益者は、受託者の権限外の行為を取消すことができます。
ただし、受託者の権限外の行為は、なんでも無制限に取り消すわけにはいきません。取引をした相手方にとっては、取消されたら困ることもあるでしょうから、相手方の保護も考えなければなりません。
そこで、受託者の権限外行為の取消しにあたっては、取引の相手方が、権限外行為であることについて悪意又は重過失であること、そして、不動産に関しては信託の登記がなされていることが要件になっています(信託法27条2項)。
つまり、信託の登記がなされていなければ、受託者が権限外の行為をしても、受益者がそれを取消すことができなくなります。


まとめると、信託の登記をしなければ、誤った差押について異議を述べることができず、倒産隔離機能が働かない。よって信託財産の独立性を保つこともできない。
また、信託の登記をしなければ、受託者の権限外行為を受益者が取消すことはできない。

このように、不動産に関しては、信託の登記をすることが、受益者保護の要の一つであることが分かります。
信託の登記は、信託法34条で課せられた受託者の義務でもあるので、不動産信託の場合には、きっちりとした内容のものを作らなくてはなりませんね。

それでは今日はこの辺で。

当事務所は、一般の方からの相談のみならず、専門家からの有料相談、共同受任、契約書チェック、講演会講師なども引き受けております。

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