2017年8月12日土曜日

訴訟信託の禁止の判例

司法書士の谷口毅です。
お盆休みに入りました。午前中は、盆明けに提訴する訴訟の判例リサーチ。
午後は、軽くドライブしてから、夏祭りのシャボン玉マシーンの準備。
そして、メールで信託について軽く議論してから、登記の書類を作らないと、と思っているところです。


さて、今日は福岡高裁平成29年2月16日判決について。
債権譲渡契約が、訴訟信託に当たるとして無効とされた事案です。

なお、関連する記事として、「訴訟目的信託の禁止とは」があります。

本事案では、Xさんが、2回も事故に遭遇しています。
まず、妻の所有する車をXさんが運転していて、事故に遭いました。
同じ月に、Bさんの所有する車をXさんが運転していて、事故に遭いました。
妻の車とBさんの車が、損傷してしまったのです。

そこで、Xさんは、妻とBさんから委託を受けて、自ら原告となって、弁護士に訴訟を委任し、事故の加害者に損害賠償請求の訴えを提起しました。しかし、原告適格について争われてしまったため、訴訟の最中に妻とBさんから損害賠償請求権の債権譲渡を受けたのですね。



妻とBさんが自ら原告にならず、わざわざXさんが原告になったのは、Xさんの加入する保険の弁護士特約を使いたかったから、というのが主な理由だったようです。
そうすると、弁護士特約を使って訴訟をすることがメインの目的の債権譲渡であり、訴訟信託の禁止(信託法10条)に該当するとして、債権譲渡が無効であると判断されました。

訴訟目的信託の禁止は、弁護士代理の原則の潜脱を防止するため、ということがよく言われます。ただ、弁護士が代理したとしても、弁護士特約を使って訴訟をするための債権譲渡も、やはりダメなのだ、と判示されたのですね。

しかし、このXさん、原審では、保険金を取得するための自招事故だったのではないか、とまで言われていますね…

しかし、「信託」という言葉を使わない、ただの債権譲渡であっても訴訟信託の禁止の法理で請求を棄却するのは、面白いですね。

それでは、今日はこの辺で。

当事務所では、一般の方からの相談のみならず、専門家からの有料相談や共同受任、契約書チェック、講演会の講師などもお受けしております。


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