2017年7月11日火曜日

受託者の帳簿作成義務など

司法書士の谷口毅です。
今日は、被後見人さんの転居の手続などで時間が過ぎていきました。
安心して生活できる場所を確保してあげる、というのは、必ずしも簡単なことではないのだなぁ、と痛感しつつ…

さて、今日も楽しく民事信託・家族信託の勉強をしましょう。
今日は、受託者の帳簿作成義務の話をします。



受託者の帳簿の作成義務については、なかなか正確な理解が難しい。信託法を読むだけではなく、信託計算規則まで読まないと、よく分からなくなってしまうんですよね…

まず、信託法37条1項と2項を見てみます。

第三十七条  受託者は、信託事務に関する計算並びに信託財産に属する財産及び信託財産責任負担債務の状況を明らかにするため、法務省令で定めるところにより、信託財産に係る帳簿その他の書類又は電磁的記録を作成しなければならない。
 受託者は、毎年一回、一定の時期に、法務省令で定めるところにより、貸借対照表、損益計算書その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録を作成しなければならない。
 
細かくいうと、1項の書類が「信託帳簿」と呼ばれ、2項の書類が「財産状況開示資料」と呼ばれ、ちょっと違うんですけど…
 
この条文で、みんなびっくりしてしまうんですよね。
えっ、貸借対照表や損益計算書を、毎年作らないといけないの?
息子に実家の管理を任せるだけの簡単な信託なのに、あまりにも負担が大きい…などと悩んでしまうわけです。
 
で、分からなくなったら、立法担当者クラスの先生が書いた下記の本を参照すると、答えが見出せます。 



信託法37条2項で貸借対照表や損益計算書が掲げられているのは、あくまで例示。必ずしも、このような企業会計の原則に従う必要はないわけです。
 
37条には「法務省令で定めるところにより」とか、「その他の法務省令で定める書類又は電磁的記録」とあるので、法務省令をみてみないといけませんね。
この法務省令が、信託計算規則の4条であるわけです。
詳しくは、みなさんで信託計算規則4条を読んでみてほしいのですが、信託帳簿の作成にあたっては、「信託行為の趣旨を斟酌しなければならない。」とあります。
 
また、信託帳簿は一つの書面である必要はなく、いくつかの書面をつなぎ合わせて分かれば大丈夫。別の目的で作られた書面を代用しても大丈夫。
 
つまり、固定資産税の明細や預金通帳の写し、信託契約書に付された財産目録などでも
大丈夫、ということになりますね。
 
で、1項の「信託帳簿」が日常的な取引や財産状況を記録する帳簿であるとすると、2項の「財産状況開示資料」が、1年に1回は必ず作るべき、受益者への報告資料になります。
これも、必ずしも貸借対照表や損益計算書を作るべき、というわけではなく、とにかく信託財産に関する積極財産や消極財産の概況が総括的に分かればいいのだ、ということになります。
 
もちろん、大規模で複雑な取引を行う信託であれば、厳密な会社会計の原則に沿った帳簿作成が求められると思いますが、家族間での小規模な信託であれば、必ずしもそうではない、ということになります。
 
それでは、これからも楽しく、民事信託・家族信託を勉強しましょう。
 
当事務所では、一般の方からの依頼、専門家からの相談や契約書の確認、共同受任、講演依頼などもお受けしております。
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