2017年6月22日木曜日

民事信託と不動産取得税 その2

司法書士の谷口毅です。
本日は、米子市という県内の少し離れた市で、銀行さんに対して民事信託のご説明をしていました。その後、夕方の別の用事まで、米子市内の日帰り温泉施設にこもって、2回もお風呂に入ったり、書類作成をしたり。
ホントはビールが飲みたかったけど…しょうがない…


さて、本日も楽しく、民事信託・家族信託を勉強しましょう。
今日は、前回の続きで、民事信託と不動産取得税についてです。
前回の記事は、こちらですね

民事信託と不動産取得税

 要するに、
①信託の開始時の委託者から受託者への所有権移転は、不動産取得税がかからない。
②受託者変更時の、旧受託者から新受託者への所有権移転は、不動産取得税がかからない。
③受益権の譲渡時は、不動産取得税がかからない。 
というのが前回の記事の概要でした。

上記の①②は、形式的な所有権の移転であると地方税法に規定があるからで、③は債権譲渡であって所有権の移転がないから、ということでした。



では、本日のテーマ。信託財産の運用の結果、不動産を取得した場合はどうでしょうか?

例えば、信託財産に属する金銭を用いて、不動産を買った場合を考えます。
不動産を買うと、今まで信託財産に属していた金銭が、信託財産の中から出て行ってしまいますね。
そして、金銭の代わりに、今度は不動産が信託財産の中に入ってくる、と考えることができます。

そうすると、売主から、買主である受託者に対して所有権移転の登記をするのと同時に、信託の登記を行い、信託目録を登記記録に調製することになります。
これは、実際に不動産を売ったり買ったりする、という現実の取引があるので、「形式的な所有権の移転」とはいえませんね。
すると、不動産取得税は受託者に課税されます。

では、信託財産に属する金銭を用いて、建物を建築した場合はどうか?
この場合、建物の所有権保存登記をするのと同時に、信託の登記を行い、信託目録を登記記録に調製することになります。
不動産の購入の場合と同じく、実際に建物を建築する、という現実の不動産の取得があるので、「形式的な所有権の移転」とはいえませんね。
すると、不動産取得税は受託者に課税されます。

なお、ここで、「受託者」に課税されるというのがポイントです。
例えば、信託財産の運用に関する所得税などは、「受益者」に課税されますし、受益権を贈与した場合の贈与税は、「受益権の贈与を受けた者」に課税されます。
従って、信託の税金というものは、ぜんぶ受益者にかかるのではないか、と思っている方が多いのではないかと思います。

受益者が税金を納めるというのは、所得税・法人税・消費税・相続税・贈与税・道府県民税・市町村民税・個人事業税について、「信託財産に属する収益や損失は、受益者の収益や損失とみなす」「信託財産に属する資産や負債は、受益者が保有しているものとみなす」などという法律の規定が、それぞれの税法の条文にあるからなのですね。
細かい表現ぶりは、それぞれの税法によって異なりますので、条文をあたってみてください。(所得税法13条、法人税法12条、消費税法14条、相続税法9条の2、地方税法24条の3、地方税法72条の3、地方税法72条の80、地方税法294条の3くらいを見ればいいと思います。)

それに対して、不動産取得税と固定資産税に関しては「受益者が所有しているとみなす」という規定はありません。
そうすると、信託財産の所有者は受託者ですので、受託者に固定資産税と不動産取得税が課税される、ということになります。

で、受託者が固定資産税や不動産取得税を払った上で、それを経費として所得税を申告する場合には、受益者の経費とみなされるわけですね。

同じ地方税法の中でも、固定資産税と不動産取得税には「受益者が所有しているとみなす」がないのに、個人事業税や市県民税には「受益者が所有しているとみなす」があるのは、面白いですね。
同じ法律の中でも、「利益」や「資産」についての税金は受益者に、「所有」についての税金は受託者に、ということで使い分けをしているような印象を受けます。

あ、そうそう、どうでもいいけど、不動産取得税についていえることは、自動車取得税についてもまったく同じ考え方ができますので、マニアックですけど補足しておきます。

ということで、不動産取得税について、ちょっと勉強してみました。
次回は、信託の終了時の不動産取得税について、考えてみましょう。

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