2017年6月11日日曜日

信託の登記の必要性と受託者の分別管理義務

司法書士の谷口毅です。
2週間連続で、金曜日に、民事信託の契約書作成の勉強会の講師をやっておりました。
会場は大阪の士業の先生の事務所をお借りしたのですが、私は鳥取からSkypeで講師を務める、という方式で、スムーズに勉強会を進めることができました。
鳥取にいても、少人数のゼミ形式だったら、全国どこででもできそうな気がしてきました。




さて、本日も楽しく民事信託・家族信託を勉強しましょう。
本日は、信託の登記の必要性の話。

信託登記といえば、下記の4冊ですね。信託の登記は、理論的にも色々と難しいところがあるので、しっかりと研究が必要です。

   

そもそも、登記をするのは何のためか?と言われたら、司法書士だったら、「対抗力を得るため」と答えると思います。
また、「登記は、必ずしなければいけないんですか?」と聞かれたら、「もちろんするべきだと思います。でも、法律上の義務ではないし、罰則もないですよ。」と答えることになりますね。

ただ、信託登記の場合は、放置してもいいものだとは言い切れません。
なぜなら、信託登記の義務について、信託法の34条にも書かれているからですね。
受託者は、自分の固有財産と信託財産を、分別して管理しなければいけない。信託の登記をすることは、信託財産であることを公示するために不可欠なものです。この信託登記の義務は、免除できないのですね。強行規定です。

通常の登記と異なり、信託登記については、受託者としての分別管理義務の一環であるから、これを怠ると受託者としての責任を問われますよ、ということになります。

ただ、注意しなければならないのは、信託法34条は、受託者の「固有財産」と「信託財産」を区別するために信託登記をすることを義務付けるものなので、委託者から受託者に所有権移転登記をすること、については直接義務付けているものではないと考えられます。

でも、委託者から受託者に登記をしないでいて、万が一にも何か損害が発生したら、受託者として適切に財産を管理しなかった責任は問われるとは思いますので、信託財産に属する不動産については速やかに登記を具備しておくことが望ましい、ということになります。

単なる自分の所有物だったら、登記をしようが放置しようが、自分のリスクで判断すればいいんでしょうけれども、信託の受託者となると、他人のための財産管理をする責務を負うので、受益者の権利を護るためにもしっかりと登記をする必要があると思われます。

では、これからも、楽しく民事信託・家族信託を勉強しましょう。

当事務所では、一般の方からの相談のみならず、専門職からの共同受任、有料相談、講演なども承っています。

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