2017年6月13日火曜日

信託目録に受益者を記録しない場合

司法書士の谷口毅です。
このブログを書き始めてから、ほぼ毎日、なにがしか信託のことを考える状態が続いています。
学べば学ぶほど、よく分からないことがたくさんでてきて、戸惑う日々ですけど、それも大切なことなのだと思っています。
今日も楽しく、民事信託・家族信託を学びましょう。



昨日の記事に引き続いて、不動産登記の信託目録について。
信託目録に、受益者の氏名又は名称及び住所を記録しないでいい場合について、もっと掘り下げてみましょう。

   

昨日の記事は、こちらですね。


要するに、受益者代理人がある場合には、受益者代理人について「受益者に関する事項等」の欄に記録すれば、受益者自身については記録する必要がない、ということでした。

さらに、この欄に、「受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定め」を記録した場合にも、受益者について記録する必要がありません(不動産登記法97条1項2号、同条2項)。

例えば、
「受益者 一般社団法人甲トラストの代表理事が指定した者が受益者となる。」
「受益者 天下一武道会の優勝者が受益者となる。」

などという記載をすれば、実際の受益者が誰であるのか、記録する必要はない、ということになります。

もちろん、昨日の受益者代理人の場合と同様、併記しても問題はありません。

このように、登記申請に関しても、どのような事項を記録して、どのような事項を記録しないのか取捨選択ができることになります。
司法書士の登記業務といえば、一般的には、法律で決まった事項を形式的に記録するだけ、ということが多いですが、信託登記に関しては、何を登記すべきか、何を登記すべきでないのかということについて、責任を持つ必要があります。

そこが、信託登記の面白さでもあり、責任の重さでもある、ということになります。
個人的な印象ですが、登記をするにしても、実体法関係に踏み込んで、そこから登記に記録すべき事項を抽出し、将来にわたって不具合が起こらないかどうかを判断しながら、申請書を作成する作業と言うのは、なんだか公証人に近いものではないか、という気がしています。(安易に言うと公証人に怒られるかもしれませんが。)
信託の実体法を知らなければ、登記をすることはなかなか難しい、と思っています。

あ、あと、誤字をすると半永久的に残るので気をつけましょう…ホント…色々と苦い思い出が…

なお、受益者の表示を記録する必要がない場合として、①受益者代理人がある場合②「受益者の指定に関する条件又は受益者を定める方法の定め」を登記した場合、という2種類をこのブログでは取上げました。

他にも、③信託管理人がある場合、④受益証券発行信託である場合、⑤受益者の定めのない信託である場合
などというケースでは、受益者を記録する必要がありません。

そうはいっても、これらは家族信託ではほとんど使う機会はないでしょうから、覚えておくべきなのは、2パターンだけ、ということになります。

それでは、これからも、楽しく民事信託・家族信託を勉強しましょう。

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