2019年7月12日金曜日

受託者の変更と債務の承継

大阪の谷町九丁目で司法書士をしております、岡根昇と申します。
平成18年頃から少しずつ信託法の勉強を始め、平成23年に、初めて民事信託の組成に関与させて頂きました。私はリーガルサポートの会員で、後見業務にも積極的に取り組んでおりますので、民事信託の活用にあたっては、成年後見制度との調和を意識するよう心掛けています。




さて、本日は受託者の変更と債務の承継について考えてみましょう。
例を挙げて考えます。
信託財産に属する不動産に雨漏りが生じたので、受託者が修理をしました。修理業者に50万円を支払わなければなりません。

これは、信託事務によって受託者が負担した債務ですので、「信託財産責任負担債務」の一種です。受託者は、信託財産から修理業者に50万円を支払いますが、信託財産から支払えない場合には、固有財産から支出をしなければなりません。

さて、まだ50万円を支払わないうちに、受託者が病気になって、辞任せざるを得なくなりました。そして、後任の受託者が就任しました。そして、後任の受託者は信託財産の全てを前受託者から引き継ぎました。

この時、50万円を支払うのは誰でしょうか?
後任の受託者が、信託財産から支払うのは、みなさん、直感的に分かるでしょう。しかし、問題は信託財産から支払えない場合です。

ここで、突然ですが、クイズです。下記の3つのうち、選択肢はどれだと思いますでしょうか。
選択肢A 後任の受託者が、固有財産から50万円を支払わないといけない
選択肢B 前受託者が、辞任した後でも、固有財産から50万円を支払わないといけない
選択肢C 後任の受託者も、前受託者も、連帯して、固有財産から50万円を支払わないといけない

お分かりでしょうか?

答えはBになります。
前受託者が、辞任後も50万円を支払うことになるんですね。しかも、前受託者が死亡によって任務を終了した場合には、前受託者の相続人が、固有財産から50万円を支払わないといけません。

なお、前受託者が50万円を支払った場合には、後任の受託者に求償することはできます。この場合、後任の受託者は、信託財産の中から、求償に応じることになります。


本日の内容と関連する信託法の条文は、21条、75条6項、76条です。興味がある方は、また一度読んでおいてくださいね。


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