2018年12月15日土曜日

東京地裁平成30年9月12日判決要旨(4)

前回の記事では、原告が主位的請求と予備的請求のいくつかを立てていることを述べました。
それぞれの原告の請求に対する、裁判所の判断は下記の通りです。


①原告の主位的請求(死因贈与と信託の双方が意思能力なしにより無効)
裁判所は、死因贈与及び信託契約の際の意思能力は十分だったとして、死因贈与も信託も有効であると判断しました。
よって、原告の請求は排斥されました。

②予備的請求(死因贈与は有効であるが、信託は公序良俗違反)
裁判所は、信託財産のうちの一部については公序良俗違反により無効であるが、一部については有効であると判断しました。
具体的には、
①賃貸している不動産については、収益を受益者に分配していることから有効。
②受託者が売却した不動産については、売却代金を受益者の相続税納付資金等に充てているから有効。
③金300万円は、信託事務に必要な金銭として有効。
一方、無価値な山林、自宅、無償で人に貸している不動産など、収益を上げていない不動産については、経済的利益の分配ができず、外形的に受益権を与えることで遺留分減殺請求を回避する目的であったと解さざるを得ず、公序良俗に反するとして無効とされました。

③予備的請求(死因贈与も信託も有効)
裁判所は、遺留分減殺請求を認めた上、減殺請求の対象については、委託者と受託者の信託設定行為ではなく、受益権であると判断しました。
つまり、委託者から受託者への所有権移転を減殺請求の対象と考える原告の主張を排斥しました。

続きます。

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