2018年12月13日木曜日

東京地裁平成30年9月12日判決要旨(3)

前回の続きです。

原告は、主位的請求の他に、主位的請求が認められなかった時のために、いくつかの予備的な請求もしています。



①主位的請求の中で、死因贈与と信託の契約締結時には、被相続人には判断能力がなかったものとして、両者の無効を主張しています。
この主張に従うと、17年前に作成した遺言のみが有効、ということになってしまいます。
すると、無効な信託登記の抹消が必要になりますし、また、死因贈与に基づいて被告が引き出したお金などは、不当利得(又は不法行為)になります。
また、遺留分減殺請求権に基づき、金銭と不動産の持分の移転請求などもしています。


②予備的請求の中で、原告は、仮に死因贈与は有効な場合でも、信託は公序良俗に反しているので無効であると主張しています。
この主張に従うと、全ての財産について、死因贈与が有効になるので、被告に3分の2、二女に3分の1が死因贈与されたことになります。
そこで、信託登記の抹消を求めるとともに、遺留分減殺請求権に基づき、金銭と不動産の持分の移転請求などもしています。


③さらに、もう1つの予備的請求の中で、死因贈与も信託も両方とも有効であることを前提に、遺留分減殺請求に基づく主張をしています。
原告は、遺留分減殺請求をした場合の減殺の対象は、委託者から受託者への財産移転行為だと主張しています。
遺留分減殺請求により、委託者から受託者への財産の移転が一部失効する結果、原告と受託者が物権的に共有することになります。つまり、持分の一部は信託財産として受託者が保有し、残部は信託財産ではないものとして原告が保有します。
しかし、このような共有状態になると、信託の目的が達成できないので、信託法に定める信託の終了事由(目的の達成不能)に該当し、結局、信託は終わるのだ、と主張しています。
つまり、遺留分減殺請求の意思表示の日付で信託が終了するので、信託財産引継を原因とする帰属権利者への不動産の移転手続が必要なのだと請求しています。その他、金銭なども請求しています。

続きます。
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