2019年12月17日火曜日

公正証書による信託契約の意義 その3

本日の担当は、東京の司法書士の池田弘子です。

本日は「民事信託において信託契約書を公正証書にすることの意義」の3回目です。

今までの記事はこちらです。
http://www.tsubasa-trust.net/2019/11/blog-post_26.html
http://www.tsubasa-trust.net/2019/12/blog-post_10.html

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では、早速、前回の続きから・・・

(メリット3)信託契約を特定するのに優れている。

私署証書の場合、いくら作成年月日と表題で特定しても、同じ契約、日付、表題の契約書は複数存在する可能性があります。

それに対して、公正証書の場合、作成年月日、表題に加えて、作成公証人、公正証書の番号で、信託契約を特定することができるので、契約を特定するのに優れているといえます。


メリット3に関連して・・・・・。

民事信託の信託目録に、帰属権利者の住所氏名について、以下のような記載がされているものを見たことがあります。

令和●●年●●月●●日東京法務局所属公証人▲▲▲▲作成にかかる令和●●年●●号不動産管理処分信託公正証書第●条記載のとおり

依頼者の要望等により、あえて具体的な個人を特定するのを避けて、公正証書の記載を引用したものです。

個人的には、信託目録に記載する事項は、本来は、登記という公示に耐えられる明確な内容にすべきで、公正証書の引用については、一定の制限があるべきだと考えています。


ただ、実務においては、例えば、帰属権利者の定めのように、上記のような公正証書の引用を認めている法務局もあるようです。
公正証書(信託契約書)の引用がどの範囲(規定)まで可能かについては、法務局の統一した見解は出ていません。

ですので、どうしても公示するのを避けたい定めがあるときは、事前に法務局に確認したうえで、公正証書で作成することを検討してみるのもよいかと思います。



(メリット4)信託取引をする第三者に信頼感や安心感をあたえることができる。

メリット4は、あくまでメリット1~3の副次的効果ですが・・・。

公正証書で作成した信託契約書は私署証書で作成されたものよりも、第三者に信頼感や安心感を与えることができます。

信託口口座を開設する際に、多くの金融機関が公正証書で作成した信託契約書の提出を求めている理由の一つです。

受託者が信託財産に属する不動産を売却したり、信託財産に属する金銭で不動産を購入する場合には、受託者の権限等を確認等するために、相手方から信託契約書の提示を求められることになるはずです。

ですので、将来、受託者が第三者との間で売買等の取引をすることが予定されているケースでは、公正証書で信託契約書を作成しておいた方がよいかもしれません。



(メリット5)紛争が起きた際の事実認定の基礎となる

谷口さんが連載している、東京地裁平成30年10月23日判決では、裁判の際に、公証人の証人尋問が決め手となっています。

紛争が発生した場合、どのようなやりとりがあったのか、当事者に聞いても判断が困難なことが多くあります。

特に、当事者は、自分にとって有利なことしか話さない傾向があります。

そこで、裁判所としては、公証人が話した内容を事実認定の基礎として採用することが多いと思われます。

なお、不動産取引などでトラブルが生じた場合には、司法書士の話した内容が事実認定の基礎となることが多いでしょう。

どのような経緯で、どのような信託契約が作成されたのか、証言が残るのは大きなメリットです。



以上、3回にわたって、「民事信託において信託契約書を公正証書にすることの意義」について考えてみました。


信託契約書を公正証書で作成すると、私署証書で作成するときに比べて、費用や手間はかかりますが、ケースによってはそれ以上のメリットも期待できそうです。

信託契約書を作成するときには、公正証書で作成すべきか否かについても、必ず検討してくださいね!


なお、少し早いですが、令和元年の本メルマガは、これにて終了とさせていただき、執筆陣一同、早めの冬休みをいただきます。

よい正月となることをお祈りしております。

令和2年も、みなさまにとって良い年でありますように。

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