2019年12月6日金曜日

東京地裁平成30年10月23日判決 その6

本日は、鳥取の司法書士の谷口がお送りしますね。

東京地裁平成30年10月23日判決の続きです。


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原告である父親は、前回の詐欺取消・錯誤無効・債務不履行解除の他に、信託の終了の主張もしています。

信託の目的の達成不能による終了と、委託者と受益者の合意による終了、という2つの終了事由です。

父親の主張の要旨は、下記の通りです。



4.目的の達成不能による終了

新築計画を推進することが、信託の目的である。

二男が新築計画を拒絶することは、信託の目的の達成不能に該当するから、信託は終了する。



この主張に対し、裁判所は、新築計画は信託の目的ではない、と判断しました。

父親の側から見れば、契約条項の中の、信託の目的が抽象的過ぎたことが、裏目に出た形になっています。



5.委託者と受益者の合意による信託の終了

信託法では、委託者と受益者の合意によって、信託をいつでも終了できます。

従って、父親は、委託者兼受益者である自分が、信託を終了させたいと決定すれば、いつでも信託を終わらせることができるのだ、と主張しました。



しかし、本契約の条項には、「受益者は、受託者の合意により、本件信託の内容を変更し、若しくは本件信託を一部解除し、又は本件信託を終了することができる」という条項があります。

裁判所は、この条項に着目します。

信託を合意により終了させる場合に、わざわざ、「受託者との合意により」という言葉を付け加えています。

委託者兼受益者が、任意の時期に終了できるとすればこの条項が無意味なものになります。

従って、この条項は、信託法164条1項に優先して適用されると判断されました。

つまり、受託者との合意がないと、信託の終了は認められない、と判断したのです。




こうして、原告である委託者兼受益者の請求は、全て棄却されました。

続きます。

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