2019年12月13日金曜日

東京地裁平成30年10月23日判決 その7

おはようございます。

本日は、鳥取の司法書士の谷口毅がお送りしますね。

今まで6回にわたって書かせていただいた、東京地方裁判所平成30年10月23日判決ですが、これが最終回になります。

今までの記事は、こちらからお願いします。
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さて、今回のケースから、何を学ぶべきでしょうか。

委託者と受益者の合意による終了に関し、受託者との合意がないと終了できないようにするような契約条項は、よく見られます。

委託者が、やっぱりやめたい、と思った場合にやめられなくなる、ということです。

これは、遺言がいつでも撤回可能であることと比較すると、バランスを欠くように思えます。

一部には、認知症の不安から遺言を撤回してしまうことがあるからよくない、信託は撤回できなくできるからよい、という意見もありますが、私は、このような意見には反対です。



次に、今回、信託の終了という父親の主張が認められていたとしても、帰属権利者は二男になってしまっています。

そこで、父親は、さらに、この帰属権利者の定めも無効である、という主張も出しています。

やはり、生きている間に信託が終了したら、父親が帰属権利者になるような定めが望ましいですね。



また、信託によって新築計画を進めたいと考えていたのでしたら、信託の目的の中にも、それが盛り込まれるべきだったと思います。

信託の目的によって、受託者のやった行為・やらなかった行為が権限内なのか権限外なのかを判断することになります。

また、信託が終了するかどうかの判断材料ともなります。

不明確すぎる信託目的の欠点が露呈したように思われます。




このように、信託契約を締結した時には問題がないと思えても、後日、トラブルになることも十分にありえます。



本件は、士業に依頼せず、自分達で公証役場に行って契約書を作成した事例です。

しかし、士業に依頼したからといって、このような契約書になってしまう可能性は十分にあります。

今回の事例は、私たちの実務に直結するものですね。


なお、「もしも自分が原告の代理人だったら、もっと他にどういう戦い方をしたのか」ということでディスカッションをしたことがあり、別の戦法を色々と考えることができてとても楽しかったのですが、ここでは触れないでおきますね。

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