2019年12月3日火曜日

信託の変更 その7

本日は、大阪の司法書士の岡根昇が担当します。

今まで6回にわたって、信託の変更についてみてきました。

長かった信託の変更も、最終回です。まとめに入ります。

今までの記事は、こちらをご覧ください。
http://www.tsubasa-trust.net/2019/09/blog-post_6.html
http://www.tsubasa-trust.net/2019/09/blog-post_27.html
http://www.tsubasa-trust.net/2019/10/blog-post_8.html
http://www.tsubasa-trust.net/2019/10/blog-post_25.html
http://www.tsubasa-trust.net/2019/11/blog-post_8.html
http://www.tsubasa-trust.net/2019/11/blog-post_19.html

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1回目の事例に戻りますね。

まずは、一つ目の事例。


1.お父さんの事務負担軽減のために、収益不動産につき信託を設定した。

信託設定時は、収益不動産の売却や再築は予定していなかったけれども、地震の被害に遭い、方針を変更せざるを得なくなった。

この事例のように、信託事務処理の範囲が、管理から処分・再築まで広がるとどうでしょう?

受託者にとっては、負担と責任が大きくなります。

委託者は、売却、再築は絶対にして欲しくないという思いで信託を設定したのかも知れません。

受益者にとっては、信託を終了してもらうのがよいのか、信託を変更して売却、再築をしてもらって信託を継続してもらうのがよいか、これは一概には言えないですね。

つまり、「信託の目的に反しないこと」、「受託者の利益を害しないこと」、「受益者の利益に適合すること」の何れもが明らかではないので、信託契約で別段の定めをしていなければ、委託者、受託者、受益者の三者の合意が必要となるでしょう。

では、裁判所による変更の場合は、どうでしょうか?

この点、前回ご紹介した立法担当者の例を踏まえると、委託者、受託者、受益者の何れかが裁判所に申立てることにより、変更を命じられる可能性はあるでしょう。



次に、2つ目の事例。

2、お父さんは、老後の生活資金の管理のため、長男を受託者として金銭を信託した。信託設定後、二男が交通事故に遭い、高次脳機能障害を患ってしまった。

お父さんは、自身の死亡後は信託を終了させるつもりだったけれども、自身死亡後も、信託を終了させることなく、引き続き、二男のために財産を管理してもらいたいと考えるようになった。

この事例の場合は、委託者兼受益者のお父さんが、信託の変更を希望していますので、委託者と受益者が関与しないパターンは考える必要はありませんね。受託者が関与しないパターンだけを考えてみます。

受託者である長男にとって、この変更がなされるとどうでしょう?

信託の期間が延びます。この点を考えるだけでも、受託者にとっては負担と責任が大きくなる変更です。つまり、「受託者の利益を害しないことが明らか」とは言えず、信託契約に別段の定めをししていなければ、受託者の関与は必要となるでしょう。

では、裁判所による変更の場合は、どうでしょうか?

裁判所による変更は、「信託事務の処理の方法に係る信託行為の定め」の変更ができるだけです。お父さんの希望は、信託の目的をも変更しようとするものなので、裁判所による変更はできないでしょう。




これまで、信託の変更について見てきました。

信託法149条には、三者の合意によらない例外規定が設けられてますが、「信託の目的に反しないことが明らか」、「受益者の利益に適合することが明らか」、「受託者の利益を害しないことが明らか」の判断は、なかなか難しいと思います。


民事信託の実務的には、信託契約に別段の定めをしていなければ、委託者、受託者、受益者の三者の合意による変更が基本となると思います。

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