2019年9月24日火曜日

信託目録を信用してはいけない? その3

本日の担当は、東京の司法書士の池田弘子です。

本日は、前回の私の記事の続き、「信託目録を信用してはいけない?」の最終回です。
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信託にかかる登記の依頼を受任した際に確認すべきこと
私は、「受益権の売買」や「信託財産に属する不動産の売買」の依頼を受けたら、まず初めに、以下の書類を確認することにしています。

1.売買契約書
2.信託設定時から現在に至るまでの信託契約にかかる契約書等の全て
3.信託目録付の登記記録(全物件、信託目録付 ← ここ大事!)

2については、現在の信託契約書だけでいいでしょ!
3については、どうせ同じ内容なんだから、信託目録は1物件のみでいいよね!
って、言われることがよくあります。
でも私は、どんなに書類の数や物件数が多くても、必ず全部の書類の内容を確認します。


2について
不動産登記法103条は、信託の登記事項に変更があったときは、受託者は、遅滞なく、信託の変更登記を申請しなければならないと規定
しています。

例えば・・・、
信託財産:土地30筆、建物2棟
信託期間:平成15年2月1日から平成25年1月31日まで
のケースで、当事者が信託期間を「令和5年1月31日まで」に伸長する旨の変更契約を締結。
この場合、受託者は、全物件について、信託目録中の信託期間に関する記載を変更する登記を申請する必要があります。
が、信託銀行が受託者になっている場合でも、極まれに、変更登記を申請するのを忘れているケースがあります。

これを見落として、信託期間が継続していることを前提とする登記を申請してしまったら・・・。
登記官は、信託目録を見て、信託は終了していると判断します。
したがって、申請した内容との間に食い違いが生じることになり、最悪の場合、登記の申請は取り下げなくてはならなくなります(恐ろしい。)。

3について
同一の信託契約の信託財産については、信託目録の内容は同一になるはずです。
ですから、先程の例でいえば、受託者は、全物件の信託目録の信託期間を「平成20年2月1日から令和5年1月31日まで」に変更しているはずですよね。

でも、もし建物だけ変更登記を申請するのを忘れてしまっていたら?
これ、私、2回も経験があります(><)。

申請するのを忘れるのなら、いっそのこと全部忘れてくれてればよいのですが、一部だけ忘れていることがあるんです。
当事者以外、登記官でも、どの物件が同一の信託契約の信託財産かはわかりません。
自分でひとつひとつ、契約書と信託目録を見比べて確認するしか方法がないのです。



信託目録は信用できない?

第三者は、信託目録をみて、信託契約の概要を知ることができます。
ですが、信託目録が、現在の信託契約の内容を正しく、適切に反映したものでなければ、本来は受理されるべき登記が受理されなかったり、受理されるべきでない登記が受理されてしまう可能性があります。

にもかかわらず、信託目録の内容は、実質的には全て司法書士の裁量に任され、その内容に変更があった場合に、必要な変更登記の申請を行うのは、信託事務を行う受託者の管理に委ねられていているのです。

何の疑いもなく、信託目録を信用するのは危険。

取引の安全を期するためには、信託目録の内容を確認するだけでなく、自分の目で信託契約書の内容を確認することは必須です。
ちょっと長くなってしまいましたが、今日はこのへんで。

信託目録」は信託の登記の要! 

信託目録の作成の基準については、また別の機会に考えてみたいなと思っています。

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