2018年3月3日土曜日

実家信託について その1

司法書士の谷口毅です。
久しぶりに、のんびりできる土日の貴重さを味わっています。
溜まっている仕事を進めたり、事務所の片づけをしたり、ちょっと昼寝したり買い物したり、壊れた家電の修理に持っていったり。
しばらく休みなしに動き回っていたので、とてもいい気持ちです。




最近、「実家信託」という言葉が少しずつ広まってきていますね。
NHKで特集されたり、雑誌や朝日新聞などにも特集記事が組まれているのを目にします。
この言葉を広めているのは、東京の知人の司法書士の力が大きいと思うので、感服するところです。

特に、鳥取のような地域では、子供たちはみな県外に出てしまい、実家に両親だけが居住している、という話は、よく聞きます。
そこで、もしも両親が老人ホームに入ったりすると、自宅は空き家になってしまうので、売却しなければならなくなるかもしれない。
しかし、その時に両親が認知症になっていると、自宅を売却することができないので、予め子供に信託して、受託者による売却ができるようにしよう、というものです。
地方都市にもニーズの多い信託の活用方法ではないかと思います。

成年後見制度の場合には、原則として、全財産を後見人が管理することになります。
しかし、信託の場合には、特定の財産のみを選択して受託者が管理することができます。
「この実家」という特定の財産だけの管理や処分が問題になる場合には、成年後見制度よりも信託の方が、小回りが利いて適している、ということができます。

成年後見の方が優れているとか、信託の方が優れているとかいうことではなく、使い分けの問題ですね。

ここでよく比較されるのが、成年後見制度の仕組みも信託の仕組みも使わないで、子供に生前贈与すればいいのではないか?ということですね。
生前贈与してしまえば、空き家になった場合に、子供が売りたい時に売れるわけです。

そこで、父A(実家居住)、母B(実家居住)、子C(県外居住)というケースで、生前贈与と信託のコストを比較してみます。
土地は固定資産評価額1000万円、建物は固定資産評価額400万円と仮定します。
また、実家の所有権登記名義人は、父Aとします。

開始時のコスト
子Cに生前贈与する場合
①登録免許税
土地1000万円×2%=20万円
建物400万円×2%=8万円
合計28万円

②不動産取得税
土地1000万円÷2×3%=15万円
建物400万円×3%=12万円
合計27万円

③贈与税
相続時精算課税制度を使うとすれば、課税なし。

生前贈与の開始時のコスト合計は、登録免許税28万円と不動産取得税27万円を足して55万円ですね。

信託の場合はどうでしょうか。
子Cを受託者として信託する場合
①登録免許税
土地1000万円×0.3%=3万円
建物400万円×0.4%=1万6000円
合計4万6000円

②不動産取得税
課税なし

③贈与税
父Aを委託者兼受益者とすれば、課税なし

ということで、登録免許税4万6000円のみが初期コストです。

生前贈与55万円と、信託4万6000円を比べると、信託の方が圧倒的に安いことが分かります。
まぁ、手間がかかる分、信託の方が司法書士等の専門家報酬が高くなってしまうので、初期コストが大きく変わるかというと、そうでもなかったりするのですが…

で、ここからが本題で、実は、生前贈与と比べた実家信託の一番いいところは、この初期コストの問題だけではなく、売却時に現れるんですよね。

それは、次の記事で書きます。
それでは今日は、この辺で。

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