2018年3月10日土曜日

実家信託について その2

司法書士の谷口毅です。
3月も中旬に入り、不動産登記・商業登記・後見・訴訟・破産・信託など、色々とやることが増えてきました。
地方の司法書士として、できるだけ業務範囲を幅広く持ち、自分のできることを着実にやっていこうと思います。




さて、本日は実家信託の続き。
前回と同じで、
父親A(実家の所有権登記名義人、実家居住)
母親B(実家居住)
子C(県外居住)
実家の土地の固定資産評価額1000万円、建物は400万円とします。

ここで、子Cに生前贈与した場合と、子Cを受託者として信託した場合の初期コストを、前回の記事では比較しました。
次に、売却した場合の譲渡所得税のコストを比較します。
売却価格は2000万円、土地と建物の取得価格は不明とします。

まず、子Cに生前贈与してから売却した場合。
取得価格が不明なので、売却代金の5%を取得費であるとみなします。
そうすると、2000万円の5%である100万円が取得費ですね。
すると、譲渡所得税は
(2000万円ー100万円)×20.315%=385万9850円。

(諸経費は控除できるでしょうが、ここでは考えません。)

では、信託の場合はどうか?
父Aが委託者兼受益者である場合には、税務上は、受益者である父Aが不動産を売却したものとみなします。
そうすると、マイホームの売却に関する特例が使えますので、3000万円まで譲渡所得税は課税されません。
そうすると、譲渡所得税はゼロになります。

385万9850円がゼロになるのは、大きいですね。

法律上は受託者に所有権があるけれども、税務上は受益者が所有しているとみなす、ということの効果はこういうところで生まれます。

さらに、父Aが死亡した後、次の受益者を母Bと指定をしておくと、この実家は母Bの居住用不動産でもありますので、やはり、受託者が売却した場合にマイホームの売却に関する特例が使えて、譲渡所得税がゼロになります。

このような観点から、実家の売却に備える場合には、生前贈与より信託の方が税務メリットが出る可能性が高いのですね。

当事務所では、一般の方からの相談のみならず、専門職からの相談、契約書チェック、共同受任、研修講師などもお受けしております。

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