2018年5月19日土曜日

受益債権に関する受託者の裁量

司法書士の谷口毅です。
水曜日には、東京で民事信託推進センターの実務入門講座の講師をして、翌日は鳥取で経済団体の例会。
そして今日は、鳥取県司法書士会・政治連盟・リーガルサポートの定時総会でした。
私はリーガルサポートの支部長として前に立たせていただきました。
イベント続きではありますが、無事に終了してほっとしました。




さて、今日は、受益債権に関する受託者の裁量の話。
受益債権については、信託行為において、様々な定め方ができますね。

「毎月10万円ずつ、受益者に支払う」という定め方。
「受託者が相当と認める金額を、受益者に支払う」という定め方。
「受益者Aには自宅に住む権利を、受益者Bには毎年10万円を、受益者Cには大学を卒業するまでの学費を与える」という定め方。
全て有効と解されます。

しかし、受益者に給付する内容を受託者が定めるような場合には、紛争の原因となりかねないので、注意が必要です。
例えば、受益者が複数いる場合に、「受託者の裁量で受益者に対する給付を定める」とする場合ですね。
この時、合理的な理由がないのに、受益者Aと受益者Bに対する給付の内容を変えてしまうと、受託者の公平義務違反に問われかねない、と個人的に考えています。

また、「受託者の裁量」が本当に適切なのかどうかの判断基準が、なかなか難しいという問題点もあります。
例えば、受益者に対する金銭の給付をゼロと受託者が定めた場合、受益者はそれに対して争うことができるのかどうか?
さらに、受託者が信託終了時に帰属権利者になるようなケースにおいては、受益者への給付を絞ることで、将来の自らの利益を図るようなことも発生しかねません。

信託行為で定められた受託者の裁量に基づく給付に対して、受益者がどの程度、受託者に対して異議を述べ、争うことができるのかという点については、私の知る限りでは明確な判断基準が存在しません。
契約書を作成する際には、このような争いの可能性にも気を配ったほうがよいと思われます。

当事務所では、一般の方からの相談のみならず、専門職からの有料相談、共同受任、契約書チェック、研修講師などもお受けしております。

それでは今日は、この辺で。

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