2018年5月15日火曜日

受益債権と信託債権の優劣

司法書士の谷口毅です。
今日は、鳥取県立図書館で、司法書士会主催の無料相談の相談員をしていました。
貸金、遺言、相続放棄など、様々な相談を受けました。
明日は、東京で民事信託推進センターの実務講座の講師をする予定です。




さて、今日は、信託財産責任負担債務について考えてみます。
信託財産責任負担債務とは、受託者が、信託財産の中から弁済をしなければならない債務です。

例えば、受益者に対して、受託者が毎月10万円の支払をしなければならないと定められていたとします。
この場合、受託者は、信託財産から毎月10万円を払わないといけません。
そうすると、受益債権に係る債務は、信託財産責任負担債務であるといえます。

受託者が、自分の権限内で借り入れを行い、信託財産から返済を行う場合や、信託財産に属する財産の補修に要した費用なども、信託財産責任負担債務ですね。

ここで、ちょっと問題が起きます。
例えば、信託財産が30万円しかない場合を考えます。
受益者には、10万円を支払う、という信託行為の定めがある。
しかし、修理代金として25万円かかってしまっている。
どう考えても、信託財産が足りない…
この場合、受益者と修理業者、どちらが優先するのか、ということです。

この場合、答えは、信託法101条にありますね。
「受益債権は、信託債権に後れる」です。

受益者は、受託者が信託財産を管理・運用・処分などを行った最後の利益を享受するものです。そうすると、補修費用などを先に払い、残った信託財産の中から受益者に支払うのが正しい姿です。
補修費用を踏み倒してまで、受益者に支払うことは適切ではない、ということになります。

それでは今日は、この辺で。
当事務所では、一般の方からの相談のみならず、契約書チェック、共同受任、研修会講師などの依頼もお受けしています。

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