2018年10月8日月曜日

特定委託者(みなし受益者)その2

前回の記事では、最近、受託者が特定委託者として扱われて贈与税が課されるのではないか?という議論について、「平成19年度税制改正の解説」をもとに、気にする必要はないと述べました。
本日は、さらに掘り下げていきます。


新信託法が施行され、それに合わせて税制も変わった際に、この「平成19年税制改正の解説」が作られたのだと思います。
ただ、当時は民事信託があまり注目されなかったために、この解説はほとんど読まれなかったのではないでしょうか。
そして、最近になって民事信託が注目されたために、税法の条文だけに目がいってしまい、「受託者に課税されるのでは?」という取り越し苦労が生まれてしまったのではないかと思います。

では、特定委託者(みなし受益者)は、どのような場合に課税されるのでしょうか。
それも、「平成19年税制改正の解説」293ページに書いてありますね。
この解説を抜粋しながら考えてみましょう。

みなし受益者とは、「受益者と同等の地位を有する者」であり、「その者に信託財産に帰せられる所得が帰属するとみなして課税することが適当な状態にある者」であると書いてあります。
つまり、実質的に受益者と同視できるかどうか、という点で判断されると思われます。

この例として、
「委託者は信託行為に別段の定めがない限り信託の変更をする権限を有することとされ、残余財産受益者又は帰属権利者の定めがなければ委託者を帰属権利者として指定する旨の定めがあったものとみなすこととされていますので、このような場合には委託者がみなし受益者に該当することになります。」
と書いてあります。

他益信託の場合、委託者は受益者ではないけれども、信託の変更をする権限がある。また、帰属権利者を信託行為で定めなければ、委託者又はその相続人が帰属権利者になる(信託法182条2項)。
ということは、この場合、委託者を、実質的に受益者と同等の権利があると考え、みなし受益者として課税する、と書かれています。

平成19年度税制改正の解説に、このような例が挙げられていることからすれば、この規定を作成した際には、受託者に課税することは想定していなかったと考えられます。
私の知る範囲では、受託者を特定委託者として課税した例は存在しません。

よって、忘れ去られてしまった「平成19年度税制改正の解説」ですが、現在、再度引っ張り出して読み直し、要らない不安に振り回されないようにする必要があると思います。

当事務所では、一般の方からの相談のみならず、専門職からの有料相談、共同受任、契約書チェック、研修会講師などもお受けしております。

(平成30年10月9日追記)
具体例として、帰属権利者の定めのない他益信託の場合が挙げられているからといって、受託者に課税することを想定していない、という論の進め方は一足飛びではないか、という指摘をいただきました。
確かに、少し言いすぎかもしれませんね。
とはいえ、受益者と同視できる実質をもっているかどうか、という視点が重要であることは変わりないと思います。

この点、受託者の分別管理の徹底が必要なのかな、と思います。
例えば、受託者が信託財産を使い込んだ場合、受益者から責任を追及されることは当然ですが、税務当局から信託を否認されて贈与と扱われる、またはみなし受益者として贈与税を課税される、などのリスクも考えておいたほうがいいような気がします。
あくまで個人の意見として。

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