2018年9月27日木曜日

信託が相続争いを激化させるリスク

本日は、民事信託について、ちょっとマイナスの側面を。
よく、巷では「民事信託を使えば相続争いはなくなる!」という謳い文句の本を見かけますね。
しかし、場合によっては、民事信託は遺言よりも相続争いを激化させる側面があることに注意が必要です。




例えば、遺言ですと、遺言者が死亡するまで存在を秘匿できますし、効力も発生しません。
しかし、民事信託ですと、遺言信託以外の場合には、委託者の生前から受託者に信託財産の所有権が移転します。
不動産ですと、ばっちり登記されますし、信託目録を見ればその内容も一目瞭然です。

よくある親族間の争いとして、「長男が親の財産を勝手に独占して、私達を排除しようとしているんです!」などという相談を受けることがあります。
もしも、他の兄弟から見た場合に、親の財産が気に食わない長男のもとに所有権移転していたら、感情的に許せないのではないでしょうか。
つまり、信託を組成することで、死後に争えばよかった紛争が、生前の紛争に前倒しされるリスクがある、といことに注意が必要です。

さらに、遺言の場合には、本人の意思のみで作成することができます。
しかし、信託の場合には、受託者の意思も当然関与してきますし、そのスキーム構築に関わった法律専門家等も、他の相続人からの攻撃の対象になりかねないことに注意が必要です。
つまり、遺言の場合には本人の意思を巡る争いだけで済んだのが、信託の場合には関与した人全員を巻き込んで、戦場が広がる可能性があるのですね。
法律専門家等が、直接、攻撃の矢面に立つ可能性があることに留意が必要だと思います。

まだ、司法書士業界全体として、信託に関する倫理規範や懲戒の規範はしっかりと確立されていません。
しかし、今後、信託に関する紛争が増えていくものと思われますし、その際に関与した司法書士が攻撃されて、懲戒請求等の対象になることも十分に考えられるものと思います。
その際、ひょっとすると、弁護士法72条との関係もクローズアップされてくるかもしれません。
これから、倫理の規範を確立していかなければいけないところです。

そうすると、依頼の際にしっかりと紛争のリスクを査定すること、場合によっては弁護士との共同受任等も視野に入れること、信託が他の制度より優れた万能ツールだという宣伝の仕方を避けることなどが必要で、そうでなければ地に足のついた実務は育たないのかな、と思っています。

ま、怖がってばかりいても仕方ないですよね。
登記してても訴訟してても成年後見してても、トラブルは発生するわけです。
ただ、私達の組んだ信託スキームのせいで、紛争が激化するようなことは避けなければいけないので、一定の留意をしつつ、楽しく実務を発展させていければよいと思っています。

当事務所では、一般の方からの相談のみならず、専門職との共同受任、有料相談、契約書チェック、講演会講師などもお受けしています。

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